NEO ΟΡΘΡΟΖ Series 5th : 森谷吉博インタビュー
――今回、引退試合を迎える“闘う広報”こと森谷選手……“選手”っていうのもなんか違和感ありますね、選手なんですけど(笑)。
「そこがねぇ(笑)」
――引退を決意したのには、何かきっかけがあったんですよね?
「きっかけというかですね、仙台の試合(04年7月)が終わって、その後もう2試合くらいかなとは思ってたんですよ。今回、引退試合をさせてもらうことになったのは、会長に言われたんです。自分としては、このまま(試合をせずに)フェイドアウトもあるかなって感じだったんですけど」
――そうだったんですか。でもそれはもったいないでしょう。チャンピオンなんですし。
「会長にも“それだと絶対に悔いが残るぞ”って言われたんですよ。しっかり自分自身で区切りをつけた方がいいって。“いつの間にかやめてた、みたいなのは寂しいぞ”と」
――実際問題、ここ数年の森谷さんはフロント業務に力を入れて、試合間隔が空いてましたよね。
「ウチの大会が盛り上がったり、アンディがMAXで優勝したりして、仕事が詰まってきたんですよね。でも、それも楽しいし充実してたんで」
――それで、このままフェイドアウトもありかな、と。
「だから、自分が現役だったってことを会長に気付かされたという(笑)」
――今は試合に向けて選手としての練習をガンガンやられてると思うんですけど、感触はいかがですか。
「その日一回だけっていうんならどうにかこなせるんですけど、連日っていうのがキツいんですよ。なにしろサボッてた期間が長いんで(笑)」
――まして、フロント業務も休んではいないわけですからね。でも練習はキツいけど、それだけに充実感もあるんじゃないですか。
「それはありますね。みんなと一緒に走って、ミットやって、スパーやってっていう疲れを引きずりながら仕事してるじゃないですか。昔、事務所に僕と緒形の二人しかいない時期もあったんですよ。なんかその頃の“オレ、頑張ってるじゃん”って感覚が甦ってきましたね。食べたいものとか飲みたいものをグッとこらえる時なんかも“ああ、オレいま選手やってるな”って充実感があるんですよ」
――キツさに酔えるというか。
「選手なんて、みんなナルシストですからね。“疲労をひきずりながら練習に向かうオレ”っていうのがいいんですよ(笑)」
――相手はどんな選手になりそうなんですか?
「アメリカの黒人選手で、やたらとイキのいいのがいるみたいなんですよ。ボクシングやってて、総合もできるっていう。そういう選手と最後にやって、まあ負けても次にえなり(のりゆき)がやったりしてストーリーがつながればいいですし。勝てたら勝てたでそれにこしたことはないですしね」
――森谷さんは以前から「次の世代に出てきてほしい」って言ってましたよね。そういう意味では最近のえなり選手の好調ぶりは頼もしいんじゃないですか。
「勢いが出てきてますね。あとはそれを本物にするために、あともうちょっとだと思うんですよ。だから一緒にスパーリングしたりして、体が動くうちに僕が伝えられるものは今のうちに伝えておこうかなと。ゆくゆくはアイツに僕のベルトを継いでほしいですしね」
――最後の試合、お客さんや若い世代に何を伝えたいですか。
「ん~、試合になったらそんな余裕はないと思うんですけど(笑)。選手として、僕はセコいタイプだったんですよ。“これは勝てるな”と思ったら無理していかないし、“危ないな”と思ったら無理していかないし」
――いかなさすぎですよ!(笑)。
「勝ちに徹するタイプだったんですよね。でも今回は、最後だし思い切って前に出てみようかなと。それで倒せればいいし、倒されてもいいし。とにかく悔いを残さないような試合ができればと」
――ホント、この試合だけは“どっちが勝つか”じゃないですからね。ひたすら森谷さんがどんな試合を見せるかがポイントですから。
「そこがねぇ(笑)」
――いやいや、頼みますよ(笑)。
「やっぱり勝って、今まで応援してくれた人に“ありがとうございました”って言ってリングを降りたいですからね。ロートルの試合して負けて帰ったんじゃ情けないんで。ちょっともう、頑張らないと」
――そして大会後は、引退の感傷にひたる間もなく『S-cup』の運営に突入するわけですね。“選手兼フロント”ではなくフロントに専念するわけですから、腕の見せ所でしょう。
「引退試合できっちり勝って、“闘わない広報”として『S-cup』に集中しますよ」
――“闘わない広報”って普通ですけどね(笑)。でも森谷さんが100%フロント業務に集中することで、もっとSBが面白くなるんじゃないかって予感は確かにありますよ。
「自分も現役だと、やっぱり選手に言いにくいことっていうのが出てきちゃうんですよね。変な負い目じゃないですけど、“コイツらにやらせてること、オレはできんのか?”っていう。でも、これからは“元選手”なんでフロントに徹して、もっともっと面白いことができると思いますね。『S-cup』はね、これはちょっと凄いことになりそうですよ」
――“オレが全力出したら凄えぞ!”と。
「“これは来た!”ってものになると思いますから、楽しみにしてください」


