ド肝を抜くハイテクニック十代選手の激突。“シーザー版ドカベン”の開幕か!
SHOOT BOXING 2008 ヤングシーザー杯OSAKA
2008年8月30日(土) 大阪・アゼリア大正
吉鷹弘氏を中心として競技を横断した若手同士の技術交流が活性化しているせいもあって、最近の大阪の格闘技シーンの盛り上がりには眼を見張るものがある。彼の元で腕を磨く総合格闘家からは次々とチャンピオンが誕生し、今や、チーム吉鷹は格闘技界全体を牽引しているといっても言い過ぎではない。
だが、肝心要はやはり吉鷹氏のホームであるシュートボクシングでなければならない。これで第三回目を数える「ヤングシーザー杯」は、今回大阪開催となり、浪速のイキのいい“ヤング・ホーク”とそのライバル達が、日頃磨き上げた技と根性をぶつけ合う格好の舞台となった。
オープニングを飾ったのは、表情からも向こう気の強さがプンプン匂い立ちそうな“いいツラ構え”の尹戸雅教と、池田拓磨のバチバチの打ち合い。開始早々、尹戸は右の強烈なストレートでダウンを奪い、組み付いてのヒザでなんとか追いすがろうとして来る池田を、派手な投げやバスターで翻弄。フィニッシュは残念ながら、バッティングの流血によるドクターストップであったが、客席をばっちり暖めて“掴みはオッケー”のオープニングマッチとなった。
次に観客の心を揺さぶったのは、第四試合の藤本昌大と近藤元貴の十代対決。奇しくも某団体主催で高校世代の選手を集めたイベントがブームの兆しを見せているが、どっこいSBにだって見逃せない気鋭の十代がいることを証明してくれた一戦だった。
華麗なステップワークと高速パンチで最初の十字砲火を浴びせたのは、茶髪をライオンヘア風に決め、純白のコスチュームが逆にちょいワル風味を醸し出す近藤。手数だけでなくコンビネーションも多彩、パンチを繰り出す合間のヘッドスリップも様になっていて、とてもデビュー戦とは思えない動きを見せる。対する藤本はちょっとモヒカン風に中央を盛り上げた短髪、くりっとした意志の強そうな目が一本気さを感じさせる19歳。だが、近藤の早いパッセージをきっちりしたガードで受け流しながら、下がり際に腿の内外にキツいロー、脇腹にミドルをぶち込んで、イケイケの攻めをきっちり分断するあたりの手際は、妙なシブさすら感じさせる。
十代の育ち盛りの対決と言うことにくわえて、パンチの近藤、蹴りの藤本と両者の持ち味が対照的だったのも、好勝負を産んだ原因だろう。2R中盤まで一進一退の緊張感のある均衡状態が続いたが、勝負を分けたのは藤本の蹴りだった。左ローで意識を散らしておいて、がら空きになった近藤の首筋に右のハイをぶち込んでみせたのだ。一瞬意識が飛んだらしい近藤は明らかにそこで失速。すかさずパンチ連打でポイントを重ねて行く藤本。近藤も意地を見せて最終ラウンドまで、倒されずにパンチを返して行ったが、ダメージは明白。パンチの精度も下がっており、藤本に一矢を報いる事は出来なかった。日頃、スーパーバンタム級王者ファントム進也のスパーリングパートナーを務める藤本の、経験値の貯金がモノを言ったのかもしれない。
他にも、Yシーザー杯の最後を飾るミドル級戦、18歳王瑞龍の強烈な右の蹴り――その高い身体能力が印象に残ったが、気負いが過ぎて百武政敏の落ち着き払った試合運びの前に失速してしまったのは残念だった。
休憩あけの表彰式では、シーザー会長が登場。賜杯を射止めた藤本に対し、「良い相手が居てくれたから良い試合が出来る。相手にも感謝しなさい」と激励。この言葉には痺れた。“勝者だけが試合を作るのではない。良き敗者を讃えてこそ素晴らしいスポーツなのだ”と言う“シーザー魂”大爆発の名言だったと思う。
思えば藤本は六月に新宿Faceで開催された前回のヤングシーザー杯で、受賞者の伏見和之に敗れて苦杯を飲んだ立場。前回“良き敗者”となった藤本が、伏見の背中に肉薄するようにシーザー杯を授賞したこの流れは、今回敗れた近藤や、まだ姿を現していない他の十代の選手たちを巻き込んで、五年後十年後のSBの屋台骨を支える大河物語へと成長して行くかもしれない。現在この階級の王座を張るファントム進也は二十四歳。彼らがその牙城に迫るまでにどんなドラマが展開され、幾つの熱い戦いが繰り広げられるのだろうか。まさに“シーザー甲子園”、いや“シーザー版ドカベン”の開幕を思わせる一幕であった。
エキスパートクラスでは、先月のRoad to “S”トーナメントで、宍戸相手に苦杯をなめた山口大雅が、メインイベンターとして地元での復帰戦に挑んだ。宍戸との大一番を闘い抜いた自信も手伝ってか、持ち前のふてぶてしさが増した印象が有る。序盤から、単発ながらも重みのある蹴りでプレッシャーを掛け続け、ぐいぐい威圧していく。中盤以降、川上の前蹴りとミドルで押し返され、若干スタミナ切れを感じさせる場面もあったが、バックブロー、ヒジなど宍戸戦でも功を奏した奇襲攻撃が随所に顔をだし、一皮剥けたところを地元のファンにもアピール。「二年間地元で勝てなかったので、今日はどうしても勝ちたかった」と語る、悲願の勝利を手にした。
また、セミでは長年SBヘビー級を一人で牽引してきた伊賀弘治が久々のホームマットに登場。正確なジャブと切れの良いローで大久保に付け入る隙を与えず。狙い済ました右パンチ一発で轟沈という豪快K.O.勝利を飾っている。
SHOOT BOXING 2008 ヤングシーザー杯OSAKA:試合結果







